2020.3.1
- コンサルティング
新型コロナウィルス 中小企業の資金繰り対策について
こんにちは。MC LINKの丸山です。
前回、新型コロナウィルスの影響で、中小中堅企業はまず資金繰りのケアが必要であると説明しました。今回は、①今後(現在)中小企業の資金繰りにどのような事象が想定されるか、②どのような対応策が必要か、を考察したいと思います。
①中小企業の資金繰り影響
新型コロナウィルスにより、中国の生産がストップすることに伴うサプライチェーンの停止及び消費意欲の低下、物流の停止が発生しています。
そのため、中業企業では、2月以降急激な受注の低下、仕入の困難等の可能性が想定されます(業種、業態にもよりますが)。
急激に売上が減少した場合、下記のような企業は資金繰りが特に厳しくなっていくと思われます。
A 手元資金が薄い企業
B 固定費(人件費等)の割合が高い企業
C 資金構造上、入金先行が多い企業
A・Bについては、なんとなく想像つくかと思いますので説明を省略します。
Cの入金先行とは、具体的には手形の割引、ファクタリング、支払手形の振出し、を行っている企業です。通常の資金構造の場合、仕入→在庫→販売という順を辿るため、資金は支払→入金という順になりますが、上記の企業は入金→支払、という順番を辿ります※
※貸借対照表を見て、営業債権と比べて支払債務が大きい企業と考えてもらって構いません
このような企業は、売上が急激に落ち込むと、入金額は落ち込みますが、支払額はすぐには落ち込みません。なぜなら売上が落ち込む前(新型コロナの問題が起きる前)に仕入れた支払いは、これからやってくるためです。
例えば、支払手形の振出している企業。支払のサイトが4か月だとした場合、支払手形の決済額は、去年(この問題が起きる前)の仕入に対応するものです。「入金が減少するが、支払は減少しない」、このため損益の悪化以上に資金が減少します。業種によっては、10月~12月に取引ボリュームが増える企業もありますが、このような企業は特に影響が大きいでしょう。
②中小企業の資金繰り対策について
上記のような企業はどのような対策をとる必要があるかを以下で考察します。
A 資金繰表の精査
中小企業の中には作成・運用をしていない企業も多いようですが、資金繰表の作成、精査をすることをお勧めします。
「うちは作成している」「税理士が作成しているから大丈夫」という企業の資金繰表を拝見させていただくことがありますが、しっかりシミュレートできている資金繰表は少ない印象を受けます。
・売上、仕入の季節性は加味されているか
・入金・支払のサイト(条件)は加味されているか
・向こう1~2か月で確実に分かる金額(手形の決済金額等)は反映されているか
・売上がどの程度まで落ち込んだ場合、資金ショートすることが想定されるか
これらを踏まえながら資金繰りの運用・精査が必要です。
B セーフティネット融資
セーフティネット貸付とは社会的、経済的環境の変化などの外的要因により、一 時的に売上の減少など業況悪化を来しているが、中期的には、その業績が回復し、かつ発展することが見込まれる中小企業者の経営基盤の強化を支援する融資制度です。
経済産業省は、新型コロナにより影響を受けている中小企業への資金繰り支援措置として、セーフティネット保証4号を発動することを決定しました。この措置により、新型コロナにより影響を受けた中小企業者について、一般保証と別枠の保証が利用可能となります。詳細は、以下のHPをご確認ください。
https://www.chusho.meti.go.jp/corona/index.html
https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200228001/20200228001.html
なお、資金繰りが厳しいとき調達は必要ですが、資金繰りを精査し、余裕分も含めどの程度が必要かを事前に見極める必要があります。必要でもない資金を「なんとなく」調達するのは、「なんとなく」不足しそうなトイレットペーパーを買いだめすることと同様です。制度融資といっても調達コスト(利息)は付きます。
C 与信管理
自分の会社の資金繰りが悪化する可能性があるということは、仕入先、得意先も同様と考えるべきです。
資金繰りで予期せぬ事態を招く一番の原因が「貸倒」です。売上見合いの仕入れは支払いますが、売上の回収ができなくなるというケース。資金繰りに与える影響は甚大です。
日頃から与信管理体制を構築している会社は、新規顧客との取引開始時や既存顧客は定期的に得意先の取引枠を判断し、その取引の可否判断や上限額、条件を設定します。しかし、中小企業はそこまでの管理体制が構築されていないケースがあるため、貸倒リスクに晒されています。
今回の新型コロナにより、一定程度の企業の倒産や支払留保は想定されますので、当社のみでは資金繰りに懸念がない場合でも、これに巻き込まれる可能性が高まっています。
そのため、より一層の与信管理が必要となります。
受注が落ち込んでいて業績が落ち込んでいる中、新規顧客から受注の引き合いがあった、というと飛びつきがちですが、顧客調査(詳細な説明はここでは省略します)を可能な限り行い、取引額や条件を慎重に判断することが必要となります。
D 在庫発注管理
現在、サプライチェーンが麻痺していますので、企業は「生産が止まり仕入れできない」「物流が滞って仕入が遅延している」といった状況に見舞われています。
仕入機能の低下はどこかのタイミングで解消されますが、解消されたとき発注管理が重要になります。現場の担当者に発注権限が委ねられおり発注管理が取れていない場合、どのような事態が想定されるでしょうか。
発注担当者は「待ちに待った商品がやっと入ってきた」、「待っているお客さんにやっと売れる」、「今たくさん仕入れないと次回また仕入が止まるのではないか」と考えるでしょう。発注統制が取れていない企業は、このような時、急激な仕入(支払)が発生します。
在庫過多な状況に陥りますが、これがタイムリーに売り上げることができなければ資金繰りを逼迫します。そのため、以下のような、一層の発注管理が必要となります。
・商材ごとに発注点を設定する
・発注権限者を一時的に見直す
・発注時のフローを一時的に見直す(財務などの管理担当者を発注フローに加えるなど)
などの検討をされてはいかがでしょうか。
E 換金可能資産の抽出
資金繰り懸念が生じた場合、資金調達の検討と同時に、換金可能資産の抽出をしてみてはいかがでしょうか。
・定期預金
・売上債権(手形割引、ファクタリング等)
・有価証券(上場株)
・保険積立金(解約、保険借入)
・遊休不動産
換金可能金額、流動性(どれくらい早く換金できるか)を考慮して、資金的なバッファーを見定めてください。
F 金融支援
自助努力で資金繰り改善が厳しいと判断する場合は、メイン銀行に相談にいき、返済停止や減額等の対応を検討する必要があります。金融支援を仰ぐのは、タイミングが非常に重要です。遅すぎると、打てる手が限定されてきます。可能なら財務専門家(いなければ顧問税理士)に事前相談、同行していただくことをお勧めします。
以上です。
事業再生・財務支援を生業とする当社で今なにができるかを模索した結果、少しでも参考になればと考え、ここで情報共有させていただきました。
不明点ございましたら、ご連絡ください。